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門中医院
門中医院
門中 博義

第40回

高血圧について内科

高血圧とは

正常の状態よりも高い血圧値が持続している状態を「高血圧」といいます。一般的に診察室で計測した血圧が140 / 90mmHg以上の状態を指します。自宅で測定する場合、135 / 85mmHg以上であれば高血圧と診断されます。

高血圧の原因

高血圧は原因によって「二次性高血圧」と「本態性高血圧」に分類されます。二次性高血圧は、腎臓や内分泌系(ホルモン)などの異常が原因で引き起こされます。本態性高血圧は、はっきりとした原因がわかっていませんが、遺伝的因子と環境的因子(肥満・食塩の過剰摂取・運動不足・アルコールの過剰摂取・喫煙・ストレス・加齢など)が相互に作用して引き起こされると考えられています。日本人の場合、高血圧の方の約90%が本態性高血圧であると言われています。

高血圧を放置すると

高血圧になっても通常自覚症状はほとんどありませんが、血圧が高い状態を放置すると、心筋梗塞、脳卒中、心不全、腎不全など命にかかわる病気の発症リスクが高まります。また、糖尿病や脂質異常症、肥満などを合併している場合、これらの病気を引き起こす危険性が高まります。

降圧目標

血圧は体調・環境・時間・心理的影響など様々な要因で変動するため、定期的に測定し、管理することが重要です。最近では家庭血圧が非常に重要視されており、診察室の血圧だけでなく家庭血圧の降圧目標値が日本高血圧学会から提唱されております。年齢や他の疾患の有無によって目標とすべき血圧値は異なりますので、自分の目標値を主治医に相談し、目標達成を目指しましょう。

血圧を下げるために

血圧を下げるために日常生活習慣の改善に取り組む必要があります。
その一番目は食事療法で、最も大切なのは「減塩」です。日本人の塩分摂取量は年々減少傾向にあると言われており、国民健康・栄養調査(2019年)では一日の食塩摂取量は、男性10.9g、女性9.3g ですが、血圧を下げるためには6g未満に減らすことが大切です。
二番目に重要なことは運動療法です。酸素を取り込みながら全身を動かす有酸素運動は、高血圧の治療に効果的とされています。ウォーキングなどの有酸素運動を1日30分以上なるべく毎日続けましょう。
その他に、体重管理、アルコール摂取量の制限(日本酒なら1日1合、ビールなら1日中瓶1本程度)、禁煙、ストレス解消、充分な睡眠、便秘の解消など血圧上昇を来たす要因を少しずつ減らせるようにしましょう。
これらの生活習慣の改善を行っても降圧目標値に達しなければ、薬物療法(降圧薬の内服)による治療を開始します。降圧剤は主治医の指示に従って、決められた用法、用量を守って服薬するようにしましょう。降圧目標値を達成し、それを維持して行くことが大切です。

血圧が高めで気になっておられる方は、お気軽にご相談ください。

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冨田クリニック
長谷川内科医院
長谷川 正樹

第39回

高齢者(65歳以上)糖尿病の留意点内科

近年、日本では全国的に高齢の方の人口が増加しています。
今回は、私の専門の糖尿病領域の中で、ここ数年の間にわかってきたことのうち、高齢の方の話題を一つ取り上げます。

糖尿病の方が高齢になってきますと、網膜症、腎症、神経障害の3大合併症の他に、次のような併存症に気をつける必要があります。

  • 認知症
  • サルコペニア(筋肉の減少、筋力の低下、歩行速度の低下)
  • フレイル(回復力が低下し、介護が必要となり易い状態)
  • ADL 低下(日常の活動能力の低下)
  • 骨粗鬆症(骨がもろくなった状態)
  • 骨折
  • 心不全(心臓の働きが弱くなっている状態)
  • 悪性腫瘍(大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、乳癌など)
  • 感染症(肺炎など)
  • 歯周病

新型コロナウイルス感染症の流行により、巣ごもりでの飲食の増加と運動不足のために、最近は、これらの合併症や併存症が更に増えています。
これらの合併症や併存症が起こらないように、日頃から血糖のコントロールを良くしておくことが大切です。また、合併症や併存症が起きれば、それぞれの専門の科への受診が必要です。

糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本ですが、血糖のコントロールを改善するには、各自の改善への強い意志と具体的な実行力が重要なポイントです。また、糖尿病の治療薬も以前よりも種類が増え、各自の状態にあった薬を上手に選んでもらう必要があります。
改善の具体的な方法が今ひとつわかりにくい時は、専門医に相談なさってください。

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冨田クリニック
冨田クリニック
冨田 政雄

第38回

非アルコール性脂肪肝の話から予防医学へ消化器外科

ご挨拶

JR相野駅近くで開業し、はやくも約20年の月日が経ちます。内科疾患から外科疾患、予防医学から在宅診療・リハビリテーション・創部処置など地域に根ざし患者様のニーズに添った幅広い医療の提供を行っております。

前置き

非アルコール性脂肪性肝疾患、かなり長い病名で呼びにくいと思います。まだまだご存知でない人も多いのではないかと思います。
でもこの病気、日本では有病率30%前後と決して無視ができない病気なのです。そして昨今、国際的にも増加傾向であることが問題視されています。
以下 、NAFLDと表します。

NAFLDについて

病名に”非アルコール性”とついているように大量の飲酒歴がない脂肪肝のことです。いわゆる過剰な食事摂取や運動不足を起因とする”肥満”が主な原因です。
日本でも食の欧米化に伴い"肥満"人口は増加傾向であり、NAFLDの増加は当然の結果かもしれません。
NAFLDは医学的な病態として、メタボリックシンドロームと密接な関係性があります。メタボリックシンドロームのことはご存知の方も多いと思いますが、糖尿病・脂質異常症・高血圧症などの生活習慣病と関連が強い疾患です。
つまりNAFLDは生活習慣病と密接に関連しているのです。

NAFLDの他疾患への波及
  1. 動脈硬化
    NAFLDは肝臓の病気でありながら、動脈硬化性の心血管や脳血管イベント、つまり”心筋梗塞”や”脳梗塞・脳出血”が死因の上位を占める疾患です。そのためすでに外国では、NAFLDと診断された患者様には動脈硬化についての検査を行うことが推奨されています。

  2. NAFLDは進行するとやがて肝硬変になり、その後肝癌になる可能性があります。さらに肝臓の病気であるのにも関わらず大腸癌(死亡原因:女性第2位、男性第3位)や乳癌(女性第1位)の発生頻度が有意に増加します。
    癌は診断されても早期であれば完治できる可能性がある病気です。
    以上のことからも、NAFLDと診断されるとその関連疾患はそのままにしておくと”死”に直結するものが多く、予防や早期発見を目的に各種検査を早めに受けることをお勧めします。
最後に(NAFLDの話から予防医学へ)

今の世の中は予防医学に焦点を当てています。高齢化社会がますます加速する日本では予防医学は大事なことです。現在、30兆円超の医療費のうち3分の1以上を生活習慣病関連疾患が占めているのが現状です。そのため国としても予防医学の取り組みを強化し、患者の重症化を防ぎ医療費の抑制を目指す方針としています。
今回、NAFLDを例に健康診断の重要性や早期の各種検査の必要性をお分かりいただけたと思います。
生活習慣病の進行予防のために食生活の見直しや必要であれば薬の力を使う。特に生活習慣病である糖尿病・脂質異常症・高血圧症に対してかかりつけ医でしっかり投薬調整をすることが大事だと考えます。

消化器外科医として

消化器癌として頻度の高い癌は胃癌、大腸癌です。
食欲不振や体重減少、嘔吐や血便、貧血の進行など諸症状が出るころにはあいにく進行癌、余命わずかと診断されることが少なくありません。
定期的な健康診断を受け血液検査や便潜血、ピロリ菌感染の有無などに注意しましょう。そして正常と診断されても一度は内視鏡検査を受けてみることをお勧めします。

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アイルさんだ
クリニック
美田 良保

第37回

在宅医療について内科

三田市並びに近郊にお住いのみなさん、はじめまして。
この度、2021年5月1日より保険診療を開始しましたアイルさんだクリニックの美田良保と申します。地域の皆様の在宅医として地域医療に貢献できればと思います。宜しくお願いします。

今回は在宅医療について少し紹介させていただきます。皆様の中にも興味はあるけど訪問診療ってどんな事してるの、と思われているかたもいらっしゃることと思います。参考にしていただければ幸いです。

訪問診療とは?

訪問診療とは、病院へ通院することが困難な患者様に対して、医師が定期的に自宅を訪問して診療を行うことです。
訪問は大きく2種類に分かれます。

「訪問診療」
診療計画を立て、定期的に自宅へ伺い行う診療です。通常の病院で言う「外来受診」です。
「往診」
急に具合が悪くなった時や突発的症状が現れたとき、患者様やご家族の要請に応じて診察に伺うことです。通常の病院での「救急受診」です。
対象疾患は?

以下の方が訪問診療の対象となります。

  • 病気や障害、歩行困難などで病院への通院が困難な方
  • 外来の待ち時間が大変な方
    (座位が困難、認知症などで待つことが困難など)
  • 退院後の療養を住み慣れた自宅で行いたい方
  • 自宅で医療ケアが必要な方
  • 終末期の療養生活を自宅で過ごしたい方  など
メリットは?
  • 通院の負担軽減
  • 24時間365日体制の対応
  • ワンステップでの相談
    (診察、治療だけでなく薬の処方、栄養状態の管理など)
どうやって依頼する?

現在訪問看護を受けておられる方、ケアマネージャーがついている方は訪問看護さん、ケアマネージャーに相談してください。
まだの方は、直接当院にご相談いただいても大丈夫です。

実際の診療・処置は?

参考までに当院で行っている診察内容をご紹介させていただきます。

  • 日々の診察(薬の管理、血圧などを含めた全身の把握)
  • 採血
  • 超音波
  • 点滴
  • 疼痛管理(医療用麻薬を含む)
  • 輸血
  • 管(おなかの管、栄養チューブなど)の管理
  • 外傷の処置
  • 褥瘡管理  など

入院での病室でできることをご自宅で可能な限りできるようにしています。

ご参考になりましたか?そのほかのご質問なども気軽に当院までお問合せ頂ければ幸いです。今後とも宜しくお願いします。

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整形外科ふくしまクリニック
川崎 英之

第36回

関節リウマチってどんな病気ですか?整形外科

整形外科ふくしまクリニックの川崎英之です。令和2年の3月末まで三田市民病院で約15年間に渡り、一般整形外科に加え関節リウマチ専門外来を担当しておりました。地域の皆様が健やかな生活を送れますことに、少しでも手助けができればと考えております。末永く宜しくお願い致します。

関節リウマチについて

関節リウマチは体を守るはずの免疫系の異常により起こる、膠原病と呼ばれる病気の代表です。関節に炎症が起こり痛みや腫れを生じます。特に手足の指など小さな関節の複数カ所によく起こります。また1時間以上続く朝のこわばりは強い関節炎が生じている時に起こり、特徴的な症状です。全身にも炎症が起こるので、発熱や食欲不振、疲労感を生じたり、息切れや動悸等の症状を伴う事があります。
原因は不明ですが、遺伝的要因と環境的要因が関係しています。環境的要因として喫煙があり、発症の危険性を高めるだけでなく関節破壊の進行にも関係します。また、女性が男性の5倍かかりやすいです。
コントロールが十分にできず、関節の炎症が続くと、骨や軟骨が壊され関節が変形します。以前は関節破壊は年数と共に徐々に進行すると考えられていましたが、最近になり発症後3年、特に1年以内に急激に進行することがわかってきました。そのため早期発見、早期治療が重要となります。

診断法

1つ以上の小さな関節に痛みや腫れがあり、症状が6週間以上続き、血液検査で特有の異常を認めれば、関節リウマチと診断し、治療を開始します。診断がつかない関節炎のうち25~50%は1年以内に症状が消失し、30~50%が関節リウマチに移行するとされています。また、レントゲン写真やMRIやエコー検査も診断に有用です。

治療法

治療は薬物療法とリハビリや手術を組み合わせて行います。特に進歩の著しい薬物療法が治療の中心となります。しっかりとコントロールができれば、痛みや腫れやこわばりなどの症状がなく、生活することができます。症状が再発することなく、今までと変わらない生活を送り続けることが治療の目標となります。

何となく手がこわばる気がする、手や足の指が腫れている、痛むなど、気になる症状がある場合は、早めにリウマチ専門医に相談して下さい。

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澤外科
澤外科
粟根 雅章

第35回

肝炎のこと外科

健康診断の血液検査で、”肝機能が悪化している”といわれることがありますね。酒が多かったかなとか薬が合わなかったのかななどと考え込んでしまいますが、実際何が問題なのでしょうか。肝臓の病気はいろいろありますが、ここではいわゆる肝炎についてお話したいと思います。

肝臓について

肝臓は右の肋骨に隠れた上腹部にある、1~1.5kgの体内で最大の臓器です。エネルギーの貯蔵・供給、蛋白の合成・分解、腸からの栄養物や病原体の処理、体液バランスの調節、胆汁による有害物の排泄など多様な働きがあります。肝臓がないと生きられませんし、腎不全に対する透析のような人工的な補助機械はまだ開発されていません。

急性肝炎と慢性肝炎

急に肝臓に強い炎症がおこるのが急性肝炎です。原因はウイルス感染(肝炎A、B型、EBウイルスなど)、アルコールの飲み過ぎ、薬剤によるもの、自己免疫などがあり、それぞれに特有のきっかけ(食べ物や性交渉、飲酒、薬物など)があります。自覚症状としてだるさ、食欲不振、黄疸などが見られます。多くは大事にしていたら治りますが、B型肝炎の劇症化(約1%)に注意が必要です。劇症肝炎は数日から数週間で肝不全となり、命取りです。また、急性肝炎のあと治らずに慢性肝炎になる方もいます。

慢性肝炎というのは、弱い炎症が長い間続くもので、自覚症状はほとんどありません。原因としてはB型肝炎(約20%)、C型肝炎(約70%)などのウイルス性肝炎が最も多く、アルコール性、脂肪肝、自己免疫性肝炎などが続きます。ウイルス性肝炎はうつる病気なので、ウイルス検査やワクチンが普及することで、今後減っていくと予測されています。2016年からは全乳児に対するB型肝炎ワクチン予防接種も開始されました。次いで多いのはやはりアルコール性の肝障害です。最近増加しつつあるのが生活習慣と関連のある”脂肪肝”による慢性肝障害です。肝細胞に脂肪がたまる地味な病気ですが、放置すると他の慢性肝炎と同様の経過をとる事がわかってきました。これらの慢性肝炎を放置すると、肝臓の線維化(弾力が失われ硬くなること)・肝硬変を起こして働きが数分の一以下に低下します。肝硬変になるともう元に戻ることはなく、おまけに肝臓癌ができやすくなってさらに命を脅かします。

診断法

肝臓の状態を調べるのには

  1. 血液検査
  2. 画像検査
  3. 肝生検

などがあります。血液検査では、肝酵素(AST, ALT, γGTP, LDHなど)、ビリルビン(黄疸色素)、アルブミン、血小板、凝固機能、ウイルス検査、免疫検査などが重要です。肝酵素の上昇は肝細胞がどれだけ壊れているかを示し、ビリルビンの上昇や血小板、アルブミンの減少は肝臓の働きが低下していることを示しています。ウイルスがいるかどうかは、血液中にウイルス抗原か抗体を検出することでわかります。画像検査では、まず超音波検査(エコー)で調べてから必要に応じて造影CTを撮影します。MRIは肝のできものの精密検査に役立ちます。胆石や胆管の異常をしっかり調べることも重要です。肝生検というのは、針で肝臓の一部を採取して顕微鏡で調べる方法ですが、リスクがあるので限られた場合に行います。

治療法

治療は肝硬変への進行を食い止めるのが目的で、肝炎の原因によって異なります。

  • ウイルス性肝炎
    以前はグリチルリチン酸やウルソによる肝臓をいたわる治療とインターフェロンによる免疫治療が主体でしたが、現在はウイルスに直接作用する飲み薬の治療が効果を上げな症状が出現してきます。逆に言えば症状が出るということはかなり悪いのです。皮膚や目、尿が黄色くなる黄疸をはじめ全身倦怠、腹水、食道静脈瘤、出血傾向、糖尿病、肝癌などが様々ています。C型肝炎ではこの治療で高率にウイルスそのものを消してしまう事ができるようになりました。B型肝炎では、ペグインターフェロンや肝炎ウイルスの活動を抑える飲み薬(核酸アナログ)が有効です。
  • アルコール性肝障害
    もちろん断酒が最優先ですが、アルコール依存症の治療も必要です。
  • 脂肪肝
    治療法は確立されていませんが、ダイエット、運動、糖尿病治療などが行われて一定の効果があります。
  • 自己免疫肝炎
    ステロイドの内服が有効とされます。
  • 手術治療
    手術としては肝癌の切除のほか、だいぶ進んだ末期肝疾患に対しては肝移植が一定の治療効果をあげています。一方で、肝臓が悪いと他の病気の手術が難しくなることもあります。
肝炎を放置すると

慢性肝炎が怖いのは、知らない間に肝障害が進行して肝硬変になってゆくことです。肝臓の能力には余力があるので、多少のことでは症状が出ませんが、高度の肝障害になってはじめて様々な組み合わせて出てきます。非代償性肝硬変と呼ばれる状態はいわゆる末期状態です。肝癌も他のがんと同じように治療、切除できなければ助かりません。慢性肝炎にかかってから20〜30年、高齢になって肝硬変、肝癌に至るとされます。こうならないように、継続的な検査、治療が重要なのです。

終わりに

肝臓の病気は自覚症状が乏しかったり、ゆっくり進行したりすることが多いので、一度引っかかったら定期的にチェックを受けることをおすすめします。また肝炎ウイルスの検査を受けたことがない方は、ぜひ一度調べてみてください。

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さくらこころの
クリニック

南中 さくら

第34回

気分が上がったり下がったり。
双極症(双極性障害)ってどんな病気??心療内科

初めまして。フラワータウンのさくらこころのクリニックの南中さくらです。

みなさんは双極症(双極性障害)という病気を耳にしたことはありますか?以前は「躁うつ病」と呼ばれていたので、「その病気なら知っている」という方も多いでしょう。

健康な人においても、気分の波は存在します。嫌なことがあったら気持ちが落ち込む、嬉しいことがあったら気持ちが明るくなる、というのは誰しも経験することです。また、平常時より気持ちが上がったり落ち込んだりしても、時間が経つと次第に元通りになります。

双極症では、そのような緩やかな気分の波ではなく、大きな上がり下がりの波を認め、普段のその人とは明らかに違った状態となります。また、一度その波が起こるとその気分がある程度長く持続します。

上の波が起こっている状態を「軽躁状態」「躁状態」と呼び、軽躁状態では爽快気分、何でもできるような感覚、睡眠時間が短くても元気いっぱいで、予定をどんどん入れる、などの状態となります。軽躁状態がみられる場合は双極症「Ⅱ型」です。

軽躁状態よりさらに激しい状態を「躁状態」と呼び、ささいなことで爆発的に怒ったり、誇大的な話を延々としたり、大きな買い物や借金を立て続けにするなどします。人間関係に支障をきたし、家庭や社会での立場が危うくなることも多いです。躁状態がみられる場合は双極症「Ⅰ型」です。

下の波が起こっている状態を「抑うつ状態」と呼び、みなさんご存知の「うつ病」の抑うつ状態と同様の状態となります。抑うつ状態はⅠ型でもⅡ型でも同じくらいの下の波です。

「うつ病」と診断されていた人が、時間を経て「双極症」と診断が変わることがあります。これは、とくにⅡ型の人に多い問題です。治療の序盤では、軽躁状態が過去にあったことに気づかなかったが、新たな情報が確認され診断が変わるケース、または、経過中に新たに軽躁状態が出現して診断が変わるケースがあります。

双極症ではうつ病と違って、眠れないのではなく寝すぎてしまう「過眠」や食べられないのではなく食べ過ぎてしまう「過食」など、非定型的な抑うつ症状を認めることがあります。双極症はうつ病より、発症に遺伝的な要素が影響することも知られています。25歳以下で発症した、抑うつ状態のエピソードが5回以上ある、非定型うつの症状がある、家族に双極症の人がいる、などの場合は双極症の可能性が高いので診断が適切がどうか検討する必要があります。

「同じような抑うつ状態を認めるのなら、うつ病と同じ治療で問題ないのでは?」と考える方が多いのですが、双極症の方を抗うつ薬で治療すると、薬が軽躁・躁状態を惹き起こしてしまったり、気分の波のサイクルを早めてしまうリスクがあります。また、うつ病の方と違って、抑うつ状態でも抗うつ薬が有効でないケースも多いです。双極症の薬物治療では、炭酸リチウム、ラモトリギンなどの気分安定薬が主となります。また、生活リズムの見直しや、ストレスケア、対人関係の調整などの非薬物治療も重要です。

まずは、双極症についての社会的認知が広がることが大切です。「もしかすると、これは双極症では?」と感じる人が増えれば、患者さんの早期の受診、適切な診断・治療、そして社会的な損失を回避することにつながります。頭の片隅に「双極症」のことを置いていていただければとても嬉しいです。

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どうもと内科
クリニック

堂本 康治

第33回

酒は百薬の長?内科

「酒は百薬の長」とは、「適量の酒はどんな良薬よりも効果があると、酒を賛美した言葉。」とされており、出典は古く、漢書・食貨志下で漢を簒奪した王莽の言葉と言われています。

飲酒により、リラックスしてストレスが発散されたり、人間関係をスムーズにしたりといった日常生活の潤滑油の働きをしてくれる作用を実感されている方も多いと思います。最近では、赤ワインに含まれるポリフェノールのはたらきで心筋梗塞などの予防に役立つという報告もあり、赤ワインを選ばれることも多いと思います。また、適量摂取では悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の増加を抑え、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増加させ、動脈硬化の予防につながるとの報告もあります。

どれくらいが適量なのでしょうか。厚生労働省は「健康日本21」の中で「節度ある適度な飲酒」を定義していて、通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として1日平均純アルコールで20g程度です。おおよそ「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チュウハイ(7%)350mL缶1本」のアルコール量に相当します。この数値は日本人や欧米人を対象にした大規模な疫学研究から、アルコール消費量と総死亡率の関係を検討し、それを根拠に割り出されたものです。

度を越えて大量に飲み続けると、健康を害することになります。肝硬変や膵炎などを引き起こすばかりか、高血圧にもなりやすくなります。さらに、飲酒によって発がんリスクの上昇も指摘されており、25gのアルコール量でも、口腔、咽頭、食道、および咽頭がんのリスクを最も増加させ、胃がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、女性の乳がん、卵巣がんについてもリスクを増加させるとの報告があります。また、ワイン1週間当たり1本(1日100ml程度、約12%としてアルコール量約12g程度)の飲酒を続けた場合、非喫煙者において発がんの生涯リスクが男性で1.0%、女性で1.4%上昇するとのこと。飲酒による発がんリスクの「タバコ当量」を算出し、男性で喫煙5本/週、女性で10本/週の軽度喫煙と発がんリスクが同等で、飲酒量が増えると上昇することが示されています。

タバコと癌の関係はよく耳にすることが多いと思いますので、比較されると実感しやすいですね。故事曰く、「酒は百薬の長」といえど、休肝日を設けて、ほどほど・・・あまり飲まないように・・・がいいということなのでしょう。

http://kotowaza-allguide.com/sa/sakewahyakuyaku.html
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html
Alcohol Res Health. 2001; 25(4): 263–270.
BMC Public Health volume 19, Article number: 316 (2019)
Nutr Aging (Amst). 2014 Jun 12; 2(2-3): 91–99.

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秋久医院
なかじま脳神経外科
クリニック

中島 誠爾

第32回

脳神経外科クリニックのご案内脳神経外科

なかじま脳神経外科クリニックの、中島誠爾です。
令和元年5月に三田にて開業しました。三田市の皆様をはじめたくさんの方々が健やかな生活を送れますよう、お手伝いをさせていただきたいと思っています。末永くよろしくお願い致します。

なかじま脳神経外科クリニックでは、「頭痛、めまい、しびれ、もの忘れ等の症状の原因として脳の病気がないか?」に対しMRIを迅速に行い脳の病気があるかないかを検査します。

頭痛、めまい、しびれの原因に脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などもあります。物忘れの原因として脳梗塞、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などがあります。これらの脳の病気の場合、迅速な治療が必要な場合が多いため、近隣の病院にご紹介します。脳に病気がなければ、その症状に対し治療を行ってまいります。

症状を良くすることはもちろんのこと、それらの症状からくる生活や仕事の不安を少しでも和らげ、明るく楽しく生活して頂けるお手伝いをすることを目標にしています。来て良かった、また困った時には相談に来よう、と皆様方から思っていただき、笑顔になってもらえるクリニックを目指します。

まだまだ至らないところがありますが、今後より良いクリニックを目指し、スタッフ共に成長していきますので、どうか暖かく見守っていただけると幸いです。
今後とも、よろしくお願いします。

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シオタニレディースクリニック
シオタニレディース
クリニック

塩谷 朋弘

第31回

更年期障害婦人科

1. 更年期障害とは

「閉経」とは、卵巣の機能が減退し最終的に消失した状態をいいます。自然の状態で1年以上月経が来ないと1年前を振り返って閉経としています。日本人の閉経年齢は約50.5歳ですが、その前後5年の個人差もあります。またご自身の閉経の時期を事前に知ることはできません。

閉経の前後5年間を「更年期」といいます。この期間におこる症状の中で他の疾患によるものでないものを「更年期症状」といい、その中で日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」といいます。

更年期障害の主な原因は卵巣ホルモン(エストロゲン)が大きく変動しながら低下していくことですが、それに加え加齢などの身体的因子、心理的因子、社会的因子が関係して発症すると考えられています。

2. 症状

更年期障害の症状は大きく3種類に分けられます。

  1. 血管の拡張と放熱に関係する症状(血管運動障害)
    ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗など
  2. その他のさまざまな身体症状
    めまい、動悸、頭痛、肩こり、腰痛、関節の痛み、冷え、疲れやすさなど
  3. 精神症状
    うつ症状、意欲低下、情緒不安定、不眠など

更年期障害の症状の特徴は多彩なことですが、これらが他の病気による症状ではないことを確認する必要があります。

3. 治療法

更年期障害は身体的因子・心理的因子・社会的因子が関与して発症しますので、適切な薬物療法とともにカウンセリングなどの心理的なアプローチや、食事・運動といった生活習慣の改善を図ることも大切です。

  1. ホルモン補充療法(HRT)
    更年期障害の主な原因がエストロゲンの変動にあるため、少量のエストロゲンを補う治療法(ホルモン補充療法)が行われます。HRTはほてりや多汗などの血管運動障害に効果的です。また老年期の寝たきり状態の原因となる脳血管障害や骨粗鬆症などを予防できるという利点もあります。
  2. 漢方薬
    漢方療法の基本的な考え方は、心と体のバランスを整えることにより、さまざまな症状を改善することです。またホルモン剤が使用できない場合に使用します。
  3. 向精神薬
    気分の落ち込み・意欲の低下・イライラ・情緒不安定・不眠などの精神症状には、抗うつ薬・抗不安薬・催眠鎮静薬などの向精神薬も用いられます。
  4. 食事療法
    バランスのとれた食事をとること、野菜・果物から必要な量のビタミン類をとることが大切です。また、大豆イソフラボンの含まれた食品も症状を緩和するとも言われています。
  5. 運動療法
    適度な運動は、ストレス解消に効果的であり、気持ちを前向きにする効果があります。

現在わが国では女性の平均寿命が90歳に近づき、更年期は人生の折り返し地点となっています。人生の後半のスタートにあたり、健康に留意してまいりましょう。

最新トピックス一覧
第41回:夜間頻尿のお話し
第40回:高血圧について
第39回:高齢者(65歳以上)糖尿病の留意点
第38回:非アルコール性脂肪肝の話から予防医学へ
第37回:在宅医療について
第36回:関節リウマチってどんな病気ですか?
第35回:肝炎のこと
第34回:気分が上がったり下がったり。双極症(双極性障害)ってどんな病気??
第33回:酒は百薬の長?
第32回:脳神経外科クリニックのご案内
第31回:更年期障害
第30回:糖尿病治療の進歩と今後の課題
第29回:アレルギー性結膜疾患について
第28回:糖尿病と眼合併症
第27回:小児の心雑音について
第26回:インフルエンザのワクチン、治療薬について
第25回:湿潤療法のすすめ
第24回:女性の尿漏れ(尿失禁)について
第23回:ペインクリニックとは
第22回:飲み込みの話し
第20回:慢性心不全での再入院を予防しましょう!-心臓リハビリテーションを中心に-
第19回:ノロウイルス
第18回:糖尿病にかからないようにすれば、アルツハイマー病にかかりにくくなる
第17回:向精神薬について
第14回:腰痛のお話
第13回:メンタルクリニックとは
第12回:40代から要注意!緑内障の真実
第11回:夏の皮膚とスキンケア
第9回:痛みの治療について
第8回:食物アレルギーについて
第7回:花粉症について
第6回:虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)に関して
第5回:胃食道逆流症(GERD)のはなし
第4回:生命の伝承といきいきとした経済のために
第3回:胃に棲みつく悪玉菌ヘリコバクターピロリ
第2回:加齢黄斑変性の疫学と予防
第1回:慢性腎臓病(CKD)